テキサス州のヒューストンと聞くと、まずはNASA(アメリカ航空宇宙局)が思い浮かぶのではではないでしょうか。その通り、航空・宇宙分野、また生命医学分野でよく知られています。しかしなんといっても、ヒューストンは米国における石油・エネルギー産業の最大拠点都市であり、”Energy Capital of the World”と称されていることは周知の事実です。今回は、そんなエネルギー最大都市であるヒューストンをご紹介したいと思います。
Suburban Statsの最新データによると、ヒューストンの現在の人口はおよそ200万人。テキサス州南東部にあり、ニューヨーク市、ロサンゼルス市、シカゴ市に次いで全米第4の人口を抱えるテキサス州内最大の都市です。また、日本を含む世界86ヶ国が領事館を置く世界都市でもあります。夏は湿度が非常に高くかなりの暑さとなるが、冬の寒さは比較的穏やかです。またテキサス州は、法人税が安く、州政府のさまざまな優遇措置が取られていることから、ビジネス環境の整った全米有数の地域であるといえます。
発達した交通網と恵まれた資源
ヒューストンは、フォーチュン500に入る企業の本社数がニューヨークに次いで多いです。また、サンベルトの中心都市の1つであり、アメリカのメキシコ湾岸地域における経済・産業の中枢です。この、米国のほぼ中央に位置し、メキシコと国境を接するという地理的特性に加え、港、高速道路、空港の整備による好輸送条件が組み合わさっています。
日本でも有名なシェル、コノコフィリップス等、スーパーメジャーと呼ばれる6大石油会社のうち4社がヒューストンを主な業務拠点としています。また、ヒューストン都市圏には油田設備の設置やサービスを主事業とする企業、ガス発生生産関連企業も集中しています。
ヒューストンの今と日本企業
ヒューストンには1980年代のオイルブーム以降は日本企業の増加はありませんでした。しかし、ヒューストンが今注目を集めています。テキサス州はもともとメキシコ湾海底油田を含め、在来型油ガス田で米国を代表する地帯でした。そこへシェールガス開発で先行した「バーネット」と呼ばれるシェール層に続き、油分の多い「イーグルフォード」というシェール層が2008年に開発され、経済効果が格段に高まったといいます。
東洋経済オンラインによると、日系企業の参入も活発で、「採掘権益取得などで商社が駐在員を大幅増員したり、安価なガスを利用すべく化学メーカー等が工場を建設したりする動きが増えている」そうです。
また、ヒューストン中心部から南へ約100キロメートル、メキシコ湾に面したフリーポート市が今、米国製造業の復権を象徴する場所になろうとしているといいます。ここに、世界最大の化学メーカー、ダウ・ケミカルの石油化学コンビナートがあるのです。単独企業の化学工場としては北米最大規模であり、ダウが米国内で販売する製品の44%、世界販売全体の20%がここで生産されています。
同市内にはダウ以外にも多くの化学メーカーが進出しており、日本では早くから信越化学工業が工場を有していました。また2014年3月、ダウと三井物産株式会社の合弁会社が、電解膜方式を用いたクロールアルカリ工場において、本格的な商業生産を開始したと発表しました。このように、今後も割安なシェールガス利用を求めて日本企業の工場進出や増設が相次ぐ見通しです。